全国的にコンビニエンスストアよりも激しい乱立となっている歯科医院において、そのありようも治療から予防へと移行しつつあるため、最新の技術と同等に診察室、待合室の雰囲気づくりが緊急な課題となっている。
個人経営の歯科医院は、その全面積が約80〜120平方メートルといわれている。
苦痛と緊張を強いられる、その狭い空間の中に、リラックスして会話ができるカウンセリングルームの設置が必要となってきている。
たけだ歯科医院の場合は、診察台の5つのしきりや額などを「やわらかい雲」というテーマでポップアートを繰り広げ、診察室の奥の色彩だけのカーブを持ったパーテーションを設置し、カウンセリングルームを確保した。
緑は安心・安全、橙は生命、青は精神・コミュニケーションというように視覚の情報から苦手意識の暖和を図った。
長時間、この場に滞在する医師や歯科衛生士たちが自分たちの動きがなめらかになっていると述べている。
【施行】2002年
イラストレーター 中本裕史
この医院は分譲マンション内での開業である。
それだけに色も形も既成のものである。
しかし、待合室の真ん中に柱が1本あり、シンボリックな立体に化けるだろうと予感した。
宇品は港がある町で、吹く風は海の香を含んでいる。
イラストの表現の中にその立体感を取り入れ、小さな海岸通りを意識した。
予想通り、この柱1本のペイントは周辺を一変させてしまった。
どこかシャガール風の柱が人格を持ち、待合室にアミューズメントな雰囲気を醸し出している。
1日60人以上といわれる患者さんとのやりとりが、にぎやかにはじまっているようである。
【施行 2003年】
デザイナー 部家 幸男